箱女−愉しく覗き、決して開けるべからず−
[5、箱と箱と箱と箱と箱](1/12)

 トモエの手を引いて、薄暗い住宅街を走る。次、右、左、右、右、俺の耳元に、トモエが熱い息を吐く。真冬の風が頬を叩き、でもそのうち冷たささえ感じなくなる。魔物から女を守る。その興奮で、いつもの1.5倍くらいの早さで走っている俺。


「ここです」


トモエが急に立ち止まって、遠くの明かりを指差す。いつの間にか雑草が生えた空き地に来ており、その先には古びたアパートがぽつんと建っていた。二階建ての、今時ない感じのレトロな木造二階建て。こんな場所、あったっけ。


「ここの二階なんです」


トモエに手を引かれて、錆びた鉄製の階段を登った。トモエのハイヒールが尖った音をさせて、なんだか緊張して来る。


「あの……、すみません。天満さんの部屋に行く、的なこと?」


「え?ええ。行く、的なことです」


斜め上から見下ろされて微笑まれて、なんだか震えて来る。深夜、可愛い女の子の部屋に行く。的なことをしても良いのだろうか。いや、待て。リリアは、七色の傘を持って帰って来いと言った。勇者のレベルを上げる為に。けど、行く。的なことを、断っても良いのか?こんなチャンスは二度とない。





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