箱女−愉しく覗き、決して開けるべからず−
[1、箱と箱](1/8)

 半年間、殆ど部屋を出ていない。だいたい、食料や日用品はネットスーパーが玄関先まで持って来てくれるし、趣向品もネットで注文すればいい。全てが、まるでニートを支援しているかのような便利さだ。


 先月までは月に一回、ハローワークに出向く義務があったが、それも終わり。退職金と失業手当、少し貯金もあるし、贅沢をしなければあと一年はこの調子で生活できる。


 やっとの思いで就職できたリサイクル紙の会社では、営業をしていた。本社は大阪にあり、東京支社とは名ばかりのプレハブ小屋が上野にあった。そこから古い軽自動車に乗って、小さな町工場へ飛び込み営業に向う。


「名刺を、封筒を、事務用品で印刷できる物なら何でもやります!」


 三年間頭を下げまくって、やっと大口の客を掴んだと思ったら、「海老沢事務用品に喧嘩売るのか」と、腰抜けの支社長に却下された。


 海老沢事務用品は下町の一体を牛耳っている会社で、その取引先を横取りしたら、のちのち仕事がしづらくなると言うのだ。勿論、最もな理由だった。が、しかし、そこで俺の心は折れた。


「あんたみたいな三流大学出、退職したら再就職できないと思うよ」


当時付き合っていた商社勤めの彼女に言われ、ますます意地になった。





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