メガンテ
[20](1/47)

20) 人を扱う場合には、相手を論理の動物だと思ってはならない。
    相手は感情の動物であり、しかも偏見に満ち、自尊心と虚栄心によって行動するということを、よく心得ておかねばならない。

 

              
               デール・カーネギー




「成瀬がやっと、成瀬になったよ」


母がいない隙を見計らって、父が私に耳打ちした。時に父は、私を相棒のように扱う。秘密を私と共有したいらしく、ごく稀にきわどい話までする。私と父の関係は、場面によって親子の枠からはみ出る。


 父の「成瀬がやっと成瀬になった」という意味は、直ぐに察しがついた。入院直後の患者は、廃人になる。薬を投与するにしても、少しずつ患者の状況を見ながら増やして行くという非効率なやり方はしないからだ。最初にがつん、と、マックスを与えて、そこから少しずつ減らして行く。つまり、やっと成瀬にあった薬の量になったということだ。


「お父さん。私にそんなこと、教える必要ないから」








- 185 -
前n[*][#]次n

/323 n

⇒しおり挿入

⇒モバスペ脾ook


[←戻る]