メガンテ
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「仕掛けだよね。仕掛け」


そしてバーテンに右手を挙げるのを、私は制した。これ以上酔われたら、扱いに困る。


「今夜くらい、飲ませてくださいよー。家に帰っても、奥さんも子供もいないしさ。俺、バツイチなんですよー」


「でも、帰れなくなるんじゃないですか?」


「タクシーに乗せてくれれば、直ぐですから」


貴女みたいな可愛い子と飲めるなんて、滅多にないんですから。と、水割りはさっきより濃くなる。


「どんな仕掛けだったら、売れますか?」


「そうですねー」


根本が嫌らしく口元を歪めた。私のような子供に、ビジネスの何が分かるか?というような小馬鹿にした顔。私を侮る根本を、からかってやりたくなった。


「根本さん、本気で考えてみませんか?私、良いネタがあるんですよ。一緒に、金儲けしませんか?」


「ネタ、ですか?」


アルコールに酔った根本の瞳が、一瞬光った気がした。あぁ、誰かに似ているかと思ったら。高給取りの癖に金遣いが荒くて、結果住宅ローンも払えないで自己破産する。あの、多重債務者達の瞳だ。世の中で、自分がどの位置に立っているか分からない。確実に1万円稼ぐより、一か八かで1千万を稼ごうとする人達。


「あはは、酔いが醒めました。美味しい話なら、じっくり聞かせてください」


ネタというのは勿論、未央のことだった。
 








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