メガンテ
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12) 生における大きな喜びは
    君にはできないと世間がいうことをやることである。


                    ウォルター バジョット



 未央がバイトを見付けて来たのは、それから直ぐだった。近所のファミレスなのだと母を介して聞いたが、未央が私に話しかけることはなかった。しかもシフトを夜勤にしているらしく、私とは擦れ違いの生活。同じ屋根の下にいながら、未央の行動は彼女のブログを読んで把握するしかなかった。


 未央への切り札を使ってしまったらおかしなもので、フレンドノベルへの興味も無くなってしまった。しかし、何か足りない。私は何かしっくりこない生活を、淡々と過ごしていた。




   ・・・ ◇ ・・・ ◇ ・・・




「急にすみません」


閉店の三時ギリギリになって、久しぶりに松山が現れた。雰囲気が変わったと思うのは、頬が痩けたせいだろうか?


「お久しぶりです」


フレンドノベルに興味がなくなった私には、もう松山は必要なかった。私が面倒臭そうに視線を逸らしたのを敏感に察知して、


「あ、時間とらせませんから」
と、松山は、勢いよく小さな封筒を差し出した。


「え?何ですか?」


「いやー、あのー」


照れてもじもじと体を捻る松山を気持ち悪く感じながら、その真っ白な封筒を開ける。


「招待状?ご結婚されるんですか?」


「はい、とうとう」


「――それは、おめでとうございます」


結婚するのは分かった。しかし何故、松山は私にこの封筒を渡すのだろうか。


「神無月さんにも、出席して欲しくて」


「私が?」


「だって、神無月さんのお陰で、無事に家が建ったし。転職や御花畑未央の件でも、色々お世話になったし。っていうか、俺の友人達ってろくなヤツいないから。まともな仕事に就いてるまともな知人って、神無月さんしかいなくて」






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