メガンテ
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4) 理性
   判断力はゆっくりと歩いて来るが
   偏見は群をなして走って来る






                 ジャン ジャック ルソー







「遅れてすいません」


松山は口ではそう言いながら、余裕の笑顔で椅子に腰掛けた。


 休日相談は、予約したお客様の為だけに支店を開ける。みんな恐縮したような言葉を二言三言吐き、勘違いした優越感に酔う。


 椅子にふんぞり返った松山の弛んだ腹部が、Tシャツから覗いた。そのピチピチのTシャツには、誰もが知ってる鼠のキャラクターが笑っている。ケミカルウォッシュのジーンズと履き古したスニーカーだなんて、随分とリラックスした服装で来たもんだ。


この男は、銀行から金を借りるということを分かってるのだろうか?一流企業に勤めるエリートサラリーマンだって、スーツ姿で来ると言うのに。


「必要書類はお持ち頂きましたか?」


「はいはい」


 トリコロールに一色加わったのが、会社のマークだろうか?そのロゴが入ったボロボロの封筒から、次々に書類を出して行く。


「お仕事は、お忙しいんですか?」


「そうですね〜。ご存じの通り、携帯小説の書籍化で、一部サイトや出版社は美味しい思いをしてて、まぁうちもそれに乗っかりたいから、企画立ててるんですよ。ちょっとバタバタしてます」


そう言って、例の毛先を弄る。










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