メガンテ
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3) 学問のある馬鹿は
   無知な馬鹿よりもっと馬鹿だ
               



              サルトル






 私の異動が急に決まったのは、個人ローンの需要が多い池袋支店なのに、担当者が急に体調不良を理由に退行したからだった。新しい職場で忙しくしていた方が、未央のことを考えなくて済む。たかが携帯小説サイトに、何故こんなにも心を乱されるのか自分でも分からなかった。私は未央と、そしてフレンドノベルトと距離を取ることにした。


「――あの、予約しました松山ですが」


「どうぞ」


椅子を勧める。時間午後二時。銀行が閉まる三時前が、一番混み合う。特に個人ローンの相談は一件が長引く為、予約制になっていた。


「ご相談は、住宅ローンですね?」


「はい。今の自分の状態で、どのくらい借り入れできるのかな?って」


 男は白に赤字で「I LOVE BOOKS」とプリントされたTシャツに、綿のジャケットとジーンズ、赤い縁の眼鏡の出で立ちだった。この時刻に来れるのだから、普通のサラリーマンではない。このカジュアルな格好は、ベンチャー系企業だろうか?


「お借り入れが可能か?となりますと、正式にお申し込みしていただき、保証会社の審査を受けていただかないと、ご返答できないんです。物件はお決まりなんですか?」


「親の土地と家があるもんですから、建て替えをしようと思ってて。仮の見積もりはあるんですけど……」













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