メガンテ
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「はい」


頷いて、でも、と切り返す。


「何が言いたいんですか?」


「貴女、作家になりたいんでしょ?」


「は?」


「千鶴子が言ってました。御花畑未央の作品の中に、貴女が出版社のコンテストに応募して落ちたことがあるって書いてあったって」


「子供の頃の、話です」


「悔しかったでしょ?御花畑未央が注目されて、賞賛されて。沢山のファンに囲まれてる彼女が、憎らしかったでしょ?」


畳みかける中山に、嘘をつく余裕がなくなる。


「気持ち良くは、なかったですね」


初めて、本当の気持ちを吐いた。私の心にできた小さなひび割れを目敏く見付けて、中山が滑り込んで来る。


「でしょうね――、分かります」


少しの間の後、中山が静かに言った。


「今日のところは、これで失礼します。また、来ます」


口元に余裕の笑みを乗せて、頭を下げる。中山は知っている。今夜、私が未央の遺作を読むことを。






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