メガンテ
[22](27/27)

「美幸ちゃん、行こう?」


右手を差し出されて、壁際に追い詰められる。この手を掴まないと、私は殺されるのか。それでも、いい。もう、何もかも面倒臭い。私はゆっくり、目を閉じる。その時、数人の警官がなだれ込んで来て、成瀬を床に押し倒した。


「大丈夫ですか?」


婦人警官が座り込む私の肩を揺する。


「根本さんが、根本さんが……」


「大丈夫、直ぐに救急車が来ますから」


しかし根本を確認した警官が、首を横に振るのが見えた。


「助けてください。根本さんを助けてください!」


激しく泣き叫ぶ私の肩を、婦人警官が優しく抱き寄せる。


「分かりましたよ。大丈夫ですよ」


「美幸……」


泣き声、叫び声、怒声の合間に、柔らかく私の名前を呼ぶ声に気付く。そちらを向くと、両手を後ろに回され、俯せで横たえられている成瀬の口がゆっくりと動いていた。


「美幸、今日から、美幸って呼び捨てにするね。美幸、大丈夫だよ。また、病院から直ぐに逃げ出すから」


その微笑みを見た瞬間、私の意識は、ストンと落ちた。
 






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