メガンテ
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「そう、か?成瀬は面白い患者だよ。お前も未央ちゃんのように、成瀬とのことを小説に書けば良いじゃないか」


自分より弱い立場の者と接して来た父は、人として大事な何かが欠如している。こうして娘が傷付くかもしれないことを、平気で口にする。


「弟がな、こないだ携帯を成瀬に渡しててさ。取り上げるのに苦労したよ。あの弟は、兄貴の言いなりなんだな」


「もう、止めてって!」


執拗に成瀬のことを話し続ける父に苛ついて、大きな声が出る。二階へ駆け上がる音を聞きつけた母が、声を荒げた。


「お父さん、あの子に変な話をして興奮させるのはやめてくださいよ!ただでさえ……」


その後が良く聞こえなかったが、恐らく「あの子、最近おかしいんだから」とでも言ってるんだろう。職場でも家の中でも、私は陰口を叩かれ噂されるのか。


 新しい職場にも、噂が広がるのは早かった。考えててみれば、グループ会社だ。銀行からの出向者も多い。総合職だったのに、男と問題起こしてさー。噂は回り回って、無神経な同僚によって自分の所に届けられる。






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