メガンテ
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「あ、そうなの?」


「直ぐに、裏から下に行ってください」


「う、うん」


 ひんやりした裏階段を一階に下りると、支店長がドアの前に待っていた。何か?口を開きかけた時に、その怒鳴り声が聞こえた。


「美幸を出せよ!ミ・ユ・キ!ミ・ユ・キ! 神無月美幸を出せ!」


成瀬の声?支店長は無言でドアを少し開け、外の様子を私に見せた。片目だけで覗いた先には、信じられない光景があった。


 包丁を振りかざした成瀬が、真っ赤な口を大きく開けて私の名前を叫んでいる。真っ白なシャツは所々切り裂かれ、血が滲んでいる。


「知っている人?」


私は答えられないでいた。震えが止まらず、思うように唇が動かないのだ。


「君を呼ぶように言って、ロビー案内係が用件を聞いたらあの暴れようだ」


「美幸、俺は別れないよ!何がなんでも別れない!別れるなら、こうしてやる!」


興奮した成瀬が、自分の手首を切りつけた。鋭い悲鳴が上がる。警備数名が回を取り囲んでなんとか宥めようとしているが、成瀬に利き目はなかった。


「私、彼と話してみます」


「止めないか!」


乱暴に肩を引き戻された。






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