メガンテ
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「借りた?つまり、盗んだってこと?」


「だってさ、道端に鍵を差したまんまで駐車してんだもんー」


そう言って、随分冷えた手で私を手招きする。


「さ、帰ろう。バイクは、ここに置いてけば良いよ」


成瀬には抗いがたい魅力がある。けれど、読めないその思考回路が恐ろしく、 私はどうしても腰が引けてしまう。


「ヘアースタイル、また変えたんだ」


「うん、まぁね」


成瀬の髪はオレンジに変わっていて、右側だけ広く刈り上げられていた。そのユニークな髪型さえも、成瀬なら格好良い。


「さぁ、行こう」


細く、冷たく、骨張った成瀬の指が私の手に触れ、予想以上に強く握られた。私の体は芯まで冷え切っているのに、何故か頬だけが異常に熱い。


「美幸ちゃん、緊張してる?」


「してないよ」


「そっか」


 クリスマスの青山。彼氏の腕にぶら下がる女の子達ですら、成瀬を振り返る。しかしその美しい男が掴む私の手に気付き、嫉妬の混ざった微妙な笑顔でぷいとそっぽを向く。優越感。女の私を良い気持ちにさせる優越感に、激しく酔っていた。


「美幸ちゃんって、銀行勤めてるんだよね?」


「うん」








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