メガンテ
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「中途半端だったんだよね、フレンドのベルの作品って。携帯小説書くなら、愛空みたくさ、自分の人生を赤裸々に語りましたよー的なのじゃないとウケない訳よ。レイプ、白血病、自殺、リスカ。何の才能ない子供が、自分の愚かな人生を素直に書き殴った幼稚な文章こそが、すげぇリアル?そのリアルに大人達も興味津々?みたいなさー。その私小説ジャンルでなら、素人作家がプロ作家に並ぶ。いや、勝てるんだ」


つまり「人は誰しも一生に一度は名作を書ける。自分の人生を書けば良い」か?誰の言葉だったろうか?


「でも、御社で手がけたフレンドノベルの作品は、ファンタジーではありませんでしたか?」


「中山がしつこかったんだー。俺たちはあいつに、恩がある。それに、返品された本は、中山が面倒見るっていう話しだったからさー。じゃなきゃ、出版してねーよなー?高瀬は随分反対したよな?」


「あぁ。あの作品は、本屋では携帯小説コーナーにしか並ばない。だって付加価値は“なんとかっていう携帯サイトで何万アクセス”ってことだけだから。でも携帯小説を好む読者は、あんな内容は求めてない。じゃ、ファンタジー好きの読者は読みたいか?いや、ファンタジー好きの読者は、プロ作家を読む。つまり、最初から売れないことは目に見えてた。けど、中山が欲しかったのは、うちで書籍化された作品が、サイトにあるっていう宣伝だったろうから。その宣伝で、サイトの登録者が増えたかどうかは知らないけどな」


そろそろ帰るよ。と、高瀬が席を立った。そして自分の湿ったコースターの裏に、携帯の番号を走り書きする。


「何かあったら、電話ください。貴女は賢い人のようだから」


「おいおい、愛妻家はとっとと帰れよー」


すみませんね、と小さく頭を下げて、高瀬は根本を置いていった。酔い潰れた根本と、一体どんな話をすれば良いのだろうか。気まずい沈黙が続き、それに耐えきれなくなった私が先に口を開いた。


「まだ、行けますか?携帯小説」


「いやーどうだろねー」


根本は首を振り振り、グラスの底に残ったアルコールを舐めた。







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