メガンテ
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「肉体労働です」


成瀬の華奢な体で、肉体労働なんかできるんだろうか?訝しがっていると、それに気付いたのか、


「色んな意味で、肉体を使います」と、意味深に片目を閉じて見せた。


「はぁ――」


「じゃ、また」


そして、まるでボクサーのような軽い足取りで、消えていく。その後ろ姿を見ながら、名前しか聞こうとしなかった成瀬は、また、ここで私を待ち伏せするのだろうか、と考えた。

 成瀬は同じ場所で、何度も私を待ち伏せた。携帯の番号を聞くでもなく、どこかに誘おうとする訳でなく、本人の言うとおり「会いに来た」以外のことを求めようとしなかった。


「今度、食事にでも行きませんか?」


 最初に誘ったのは、私だ。この関係が、私を落ち着かなくさせるからだ。それにこの商店街は自宅の近所であるし、両親の知り合いも沢山通る。こんな薄暗い場所で若い男と話してるなんて両親に知れたら、面倒臭いことになりそう。しかし、これは言い訳。私はこの健気で美しい男のアプローチに、負けたのだ。






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