メガンテ
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そういう母も、未央がおかしくなってここで騒動を起こされることを心配しているのだ。
変わらないじゃないか。


 フレンドノベルでは、人気作品が幾つか書籍化された。しかし、他サイトよりも遅れての出版だったからか、携帯小説のニーズから大きく外れた作品の書籍化だったからか、話題になるような売上は得られなかった。


「あの作品は、俺の上司の最期の仕事で。所謂、実話系携帯小説とは一線を画すつもりで選んだ作品だったんですけど。社内では反発も強くて。けど、押し切っての書籍化で。でも結果こうでしょ?多分、上司もそのことが見えてたのかな。だから転職したんだと思います」


結婚式に出席、そしてスピーチをすることを承諾してからは、毎日のように松山からのメールが届く。


「フレンドノベルの同僚達からは、相当怨まれました。今じゃフレンドノベルのユーザー数も減って、出会い系の温床になりかねない掲示板をコソコソやってるでしょ?携帯会社の公式サイト、安心アクセス先でそんなことやるのはマズイけど。背に腹は替えられない、と。書籍化が成功してれば、もう少し盛り上がったかも知れませんけどね」


「フレンドノベルだけじゃないですよ。どこの携帯小説サイトも、一時期のような勢いはなくなりましたよね?」


私の中でも、もう、携帯小説は終わりつつあった。




未央が家を出て行ったのは、それから約二ヶ月後だった。私は憑き物が落ちたように、フレンドノベルを覗くのも止め、ただただ、自分の作品を書くことに注力した。しかし、以前はあった、「私の作品が一番面白い」という自信は消え去り、パソコンに向かって書いては、消し、書いては、消しを繰り返していた。


 考えてみれば、私は小説を書きたかった訳ではなく、未央に負けていることが我慢ならなかっただけかもしれない。私はすっかり、文章を書くという熱意を失っていた。


 それは暫く覗いてなかった自分のHPを、気まぐれに更新しようと思った時だった。





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