メガンテ
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「足、大丈夫ですか?」


成瀬があからさまに未央を無視するので、私は彼女の背中を押した。


 二人はぎこちない会話を幾つか交わし、成瀬が口を開く度に未央の元気がどんどん無くなって行くのが分かった。よせば良いのに未央が「趣味は小説を書くこと」と言ったものだから、永瀬は純文学の話を始めたのだ。ここで、未央はギブアップ。


 成瀬が上げた作家は、どれも文豪とされる、一般的な教養がある人であれば知っている作家だった。が、勿論、一般的でない未央に分かる訳がない。


「お嬢さんは、知ってるよね?」
と、成瀬に振られて大きく頷くと、未央が嫉妬に歪んだ顔で睨み付けた。


「美幸、あれは仕返し?」


「え?」


私の部屋に荒々しく入って来た未央が、開口一番そう言った。


「私がどれだけ、成瀬さんのことを好きだったか分かるよね?」


「だから、何?」


「成瀬さんの気を引いたりして、嫌らしい!」


「私が?」


未央の思考回路が、全く理解できなかった。確かに、確かに、成瀬は格好良かった。だからと言って、彼の気を引いたつもりはない。









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