メガンテ
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「何でもない!」


堪らなくなって、二階の自分の部屋へ駆け上がった。


どうかしている!何故この私が、未央と比べられなければならないのか?未央が明るい?狡猾なだけじゃないか。それは不幸な生い立ちだからこそ、身についた生きる知恵。その不自然な明るさに、何故、何故、みんな気付かないんだ。精神科医である父でさえ、あの嫌らしい性格を見抜けないのか。苛々する、苛々する、苛々する!


「美幸、私だよ。どうしたの?ねぇ」


無神経な未央の手が、何度も何度もドアを叩く。


「み ゆ き!何を怒ってんの?」


「煩いなぁ」


ドアを少し開けると、小馬鹿にしたような未央の目が覗いていた。


「ちょっと、中に入れてよ」


「入れば良いじゃん、鍵はかかってないんだから」


「う、うん」


未央は腰を曲げた卑屈な姿勢で入って来ると、ベッドにどかっと腰を下ろした。じろじろと部屋の中を見渡して、飾ってある人形や大事にしているガラスの置物を私の許可なしに乱暴に触る。


「何?」


「私ね、あの人に会いに行こうと思うんだ」


「あの人って、誰?」








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