メガンテ
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 灰色の階段を上がって行くと、如何にも煩そうな主婦の集団が目に入った。彼女達は、団地特有の無機質なドアの前で、中の様子を窺いながら囁きあっている。そこは、未央の家だった。


「――あの、すいません。どうしたんですか?」


声を掛けると弾かれたようにドアから体を離し、複雑な表情で見つめ返す。


「何か、あったんですか?」


銀行の窓口と同じように、感じ良く微笑む。すると多分ボスなのだろう、太った女が近付いて来た。


「中がおかしいのよ。警察を呼ぼうかどうか、話し合ってたとこなのよ」


「警察?」


「そう」


女はドアに耳を寄せたままで、「ちょっと、貴女も聞いてごらんなさい」と、手招きする。私も言われた通りに、冷たいドアに頬を寄せた。


 中ではおばさんが、嗄れた声を張り上げて流行歌を歌っている。陶器が割れる音がして、びっくっと、隣りの女がその巨体を震わせた。










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