メガンテ
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「神無月さんの家から、御花畑未央の家って近いんじゃないですか〜?」


行って、様子でも見てこいと言うのだろうか?松山が次に吐く言葉が予想できて、私は黙り込む。


「神無月さんだけが、頼りなんです!」


「何故私が!」


言い掛けて、いや待てよ……、と考え直した。この男には、恩を売っといて損はない。


「――分かりました。様子を見に行きます」


「ありがとうございます!」


すいません。すいません。すいません。と、泣き声で繰り返す松山を適当にあしらって、電話を切った。





 未央とおばさんは、近所の団地に住んでいた。築三十年以上経つ古い団地には広い公園があって、子供の頃は未央と良く遊んだものだ。


 しかし未央の父親が急に家を出て行き、母親が夜の仕事を始めると、途端に狭い団地で噂が広がった。子供達は、不幸な人間に敏感だ。そんな未央がいじめの対象になるのに、そう時間はかからなかった


なんの共通点もない私達だったが、仲良くなったのはどんなきっかけだったろうか?母親を恋しがって泣く未央を私の家に連れ帰り、そのまま泊らせたことがあった。きっとあの日からだろう。あの夜に未央は、私に縋って生きることに決めたんだ。


 砂場で遊ぶ子供達を眺めながら、懐かしい記憶が甦る。思い出はいつも、こんなにも穏やかで懐かしい。










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