メガンテ
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「あの、かみなし……」


「かんなづきです」


「神無月さんか!こないだ来た時から、何て読むんだっけ?って、ずっと考えてたんですよねぇ」


えへへ。と、嘘くさい仕草で頭を掻いた。


「――ちょっと、記入内容を確認させていただきます」


  静かにして欲しくてそう言ったのに、松山はお構いなしだった。私が忙しなく手元を動かしていると言うのに、自分のことを話し続ける。殆どのお客様が、そうだった。会社名や年収などの個人情報を晒け出すと開き直ってしまうのか、途端に饒舌になって余計なことまで話し出す。


「俺、運営部なんていますけど、実は小説って読まないんですよ。文章を書くなんて言ったら、友達にメールを打つ位。あと、マンガですかねぇ」


「携帯小説を読む人の中には、本を一冊読み切った経験のない若い子が多い。って新聞で読みましたよ」


「はははは、俺もその一人だなー。若くはないけど」


「あら」私は申し込み書の家族欄を指差した。


「独身、なんですね」


「ええ、今のところ。まぁ、する予定があるような、無いような」


「独身なのに、家のローンを背負って大丈夫なんですか?」


「まぁこの安月給じゃ、直ぐに結婚なんてできませんけどね〜」


頭をぐしゃぐしゃと掻いた後、また毛先を捻る。松山のリアクションは、いちいち芝居がかっていた。









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