メガンテ
[2](9/10)

「な、何よ、拭くよ。拭けば良いんでしょ?」


慌ててお絞りを掴んだ未央が、舌打ちをしながら私を見上げる。


「こんな事で、怒らないでよね〜」


その小馬鹿にしたような表情が、私の怒りを誘う。レシートを掴み「それ、お金払うのは私だよ。ごめんとか言えないの?」と、吐き捨てるように言ってやった。


「たかが六百円で偉そうに……」


「たかが六百円なら、お前が払えよ!」


未央は一瞬わざとらしく驚いた表情を浮かべたが、次に嫌らしい蔑んだ笑みに変わった。


「ハイハイ、いつもすいません。いっつも奢って頂いて、感謝しております」


私は一度掴んだレシートを、未央に投げつけた。


「帰る!」


勢いよく喫茶店を出ると、未央の猫撫で声が追って来る。


「美幸ちゃ〜ん。そんなに怒んないでよ〜」


小さい頃から自分の不幸をウリにして、他人の善意の上に胡座をかいて来たその図々しさ。その声に余計に腹が立って歩調を早めると、「ちょっと、何をそんなに怒ってんのよ」と肩を掴まれた。


 それは不可抗力だった。誓って殴ろうと思った訳じゃない。未央の手を振り払った時、彼女の顔に当たってしまったのだ。


「美幸、殴らなくても良いじゃん……」













- 22 -
前n[*][#]次n

/323 n

⇒しおり挿入

⇒モバスペ脾ook


[←戻る]